大盛りな人生

食事と生活

何度でも再演を求めて

劇場版 少女 歌劇 レヴュースタァライトが良すぎて。上映終了ぎりぎりまで映画館に通い続けると思うので上映終わってからまとめようと思っていたけれどクソデカ感情を抱えきれなかった。

 

 

※以下各レヴューの感想

※テレビシリーズ及び2021年劇場版のネタバレ含む

※ネタバレどころか個人的な感想がほとんど、正しさなど皆無

 

 

 

 

■皆殺しのレヴュー

初見で完全においてけぼりを食らったレヴュー。でも一番印象に残っていて忘れられなかった。

曲も大場ななもあまりにかっこよすぎる。6人相手に無双する大場なな。皆殺しのレヴューなんて物騒なタイトルだけど、これはみんなを舞台少女として蘇らせるためのレヴューだ。殺して、決着をつけさせて、再生産するための。

突然始まったレヴューに、舞台に上がる覚悟ができていない者は演じることも台詞を吐くこともできない。天堂真矢がばななに殺されなかったのは、あの中で唯一常に舞台に上がる覚悟があったから。反対に、正気に返って友人としてばななに声をかけた純那が一番最初に殺されてしまう。「なんだか強いお酒を飲んだみたい」という台詞、何度も何度も再演を繰り返すことで同級生たちよりも長い時間を過ごしてきたばななの成熟具合が滲んでいてすごい。

このレヴュー、歌詞に言いたいことがすべて詰め込まれていると思うのでぜひCD音源で聴いてほしい。何よりかっこいいので。

 

■怨みのレヴュー

これに関してはもう「犬も食わん」という感想しか出てこないんだけど、演出の曲のハマり方が素晴らしくてめちゃくちゃ好き。舞台装置もすごいよね。セクシー本堂って何ですか?

というかわがままハイウェイだけレヴュー曲というよりデュエットソングなんだよ。絶縁しようとしてるのにハモるな絶妙な掛け合いするな。え、練習した?息ぴったりすぎるでしょ。

息ぴったりなのは曲だけじゃなくてお芝居も。香子に詰められてたじたじになる双葉、本当に焦ってるところもあるだろうけど香子に合わせてる?香子がガンガン入れてくる演出に双葉が振り回されている印象も。香子に振り回されたり香子に合わせたりって、舞台上だけじゃなくて今までもずーっとそうで、それが今回爆発したのかな。

対決がデコトラなのもとても良い。ギラギラの装飾はふたりの見栄と意地。あんなに息ぴったりでお互いのことよく分かってるはずなのに、仲直りが清水の舞台から飛び降りるほどのことなんて、ほんとうにしょうもないわ。大好き。

 

■競演のレヴュー

シーンのテンションの移り変わりが凄まじいレヴュー。レヴューに参加する気なんて毛頭ないひかりを無理矢理引っ張り込んじゃうまひるの演出力がすごい。曲調が一転して「あなたが…」と詰められるところ、映画館の音響でこそ真価が発揮されると思う。怖すぎる。

大場ななに殺されてないひかりは、まひるに突き落とされて死んで、向き合うことから逃げていた自分の本音を引きずり出されて舞台少女として生き返る。レヴュー後の晴れやかな表情が印象的。

クッションに受け止められてからのまひるの歌声が優しすぎて泣いてしまう。歌詞も本当に良いんだよね。ネガティブなところを見せない優しいまひるだからこそ歌える歌だし、そんなまひるがドロッドロの負の感情を曝け出してきたのがこのレヴューのすごいところだと思う。あれ、「演じてた」って言ってたけど、ちょっと本気も混じってたよね?

 

■狩りのレヴュー

このレヴューがもう本当にすごいんだよ…。

皆殺しのレヴューではあんなにあっさりと殺していたのにも関わらず純那に対してしきりに自害を求めるばななは、殺せなかったのかそれとも自分自身で決着をつけさせなければ意味がないと思ったのか。最初は意識していなかったけれど、繰り返し観れば観るほど映画序盤で純那を見つめるばななの目の冷たさにぞっとする。華恋との稽古中に我に返ってしまったとき、電車内での会話中、皆殺しのレヴューで台詞以外の言葉をかけてしまったとき。

純那がななを圧倒しているように見える序盤、「言葉が背中を押してくれる」って、わかるよ、わかる。アニメシリーズで落ち込むばななを励ましてくれていた純那ちゃん。あの時、知ってる限りの偉人の言葉を引用して元気づけようとしてくれたんだよね。それで、ばななも最後には笑ってくれたよね。でも、あの時一番ばななを元気付けてくれたのはきっとどの偉人の名言でもない、純那ちゃん自身の言葉だったんだよ。

借り物の言葉を捨てて、自分自身の言葉で語り始めてから初めて純那ちゃんが名乗る演出がめちゃくちゃ熱い。ここからやっとレヴューの本番が始まる。歌詞とのリンクもすごい。諦めない純那と諦めてほしいばなな。ずうっと純那ちゃんに執着して純那ちゃんを見つめてきたばななの台詞に被せて「あなた今まで何見てたの」って歌が入るのめちゃくちゃやばい。攻撃力が強すぎる。

かつてオーディションで「わたしだってスタァになりたい!」とぶちまけて「スタァになる!」と言い切った華恋に負けてしまった純那ちゃんが、今回のレヴューで自ら主役を名乗り一身にライトを浴びる姿はあまりにも眩しい。ばななに共感しかないよ。泣いちゃうよね。

 

■魂のレヴュー

悪魔を演じる西條クロディーヌがイケメンすぎる。いつもかわいいのに!

クロちゃんに出し抜かれてセンターを取れなかった真矢様がようやく感情を表に出すのも、あなたは空っぽの器なんかじゃない、人間だと指摘するクロちゃんの台詞も大好き。クロちゃんが自分自身を殺して、生き返ってから名乗る演出も良い。真矢様もこのあと名乗ってレヴュー本番が始まるけど、「奈落で見上げろ、私がスタァだ!!」ってあまりにも理想の台詞で尊い。「今日のアンタ、今までで一番可愛い」に対しての「私はいつだって可愛い!」も理想的すぎて、真矢様は本当に期待を裏切らない…やはり神の器だったのか…?

あとこのレヴュー、戦ってる時の映像がダントツで良い。めちゃくちゃ動く。さすがのふたり。アニメシリーズではクロちゃんが真矢様を神格化してるくらいの勢いだったけれど映画では対等なライバル関係に進展していたの、お互いに成長しているのが伝わってきてよかった。

 

■最後のセリフ

一体どこから語ればいいのか…

舞台少女華恋のはじまりは、5歳の時にひかりがくれた手紙から。アニメシリーズの中で、ひかり自身「ちょっとした自慢のつもりだった」と言っていたけれど、本当にちょっとでも華恋の気を引きたかっただけだったんだなって映画でわかる。舞台少女華恋が生まれたと同時に、ひかりは華恋のおかげで舞台少女として生き返る。スタァを諦めようとしたひかりに、華恋が一緒にスタァになろうって、あまりにも無邪気に声をかけるから。

レヴュースタァライトは、悲劇・スタァライトの戯曲という一本の串が通った物語になっていて、劇場版のレヴューは皆殺し以外すべて塔を降りる描写でラストを迎えている。華恋とひかりも同じだけれど、過去と現在で立場が逆転しているのがとてもよい。

子供の頃は、スタァを諦めようとしたひかりを華恋が舞台少女として生き返らせる(=塔に幽閉されていたひかりを華恋が解放する)のに対して、現在の時間軸では次の舞台へ進めず舞台少女としての死を迎える寸前の華恋をひかりが救う構図へ。

他の全員が食らったトマトを食べずに死んでしまった華恋。トマトは単なる燃料?それとも野性の象徴?(トマトに対して、正しいかどうかに関わらず自分の腑に落ちる解釈ができていないのがとても悔しい、みんな思うところがあったら話してほしい)

そして再生産の演出が神。曲との親和性も素晴らしい。一番の糧は手紙だけれど、子どもの頃の華恋たちの手で燃料が焚べられるのとか子ども時代の思い出の中の景色が燃えていくの、思い出を糧にする描写だと思っていたのだけれど、何度か観るうちに「奪われてしまった普通の女の子としての生活」を燃料にしている描写では…?と思ってぞくっとした。舞台を観に行く日、ひかりがお迎えに来てくれた時の玄関の描写も怖かったんだよね。

そして毎度のことながら華恋の口上から一斉に照明が彼女の方を向くのも大好き。舞台少女のきらめきに応じて舞台装置やライトが動くっていうのを知って以来尚更。さらにひかりの口上(ひかりも自らスタァを名乗っていて尊い!)から抜群のタイミングで「あなたの目を灼くのはひかり」って歌詞が入って圧倒される。映像・台詞・音楽のフルコンボ。その後の華恋目線のひかりに対する描写も華恋の台詞もすごくいい。見たまま、感じたままを掬い上げた飾り立てられていない言葉に、観客であるわたしたちは華恋と同じ景色をみて同じ感想を抱く。

華恋の最後のセリフは華恋が舞台に立ち続ける理由そのもので、同時に華恋からしたふたりの関係性の変化を表すものでもあるはず。"ひかりちゃん"は憧れの存在であり一緒にスタァを目指す友達だったけれど、"ひかり"は明確なライバルだ。何度観ても泣いちゃうよ。

 

■なぜばななはレヴューを開演できたのか

大場ななは舞台少女たちの中でもかなり特殊な立場にいて、自身はスタァへの執着がない。他の子たちがスタァへの憧れからオーディションに参加していたのに対して、ばななは大好きな舞台の再演や同期の舞台少女たちへの執着でしか動いていない。その点から、ばななは舞台少女であると同時に舞台の開演を望む観客や主催者としての側面もあり、レヴューを開催することができたのかな。とは思いつつもすっきりと腑に落ちなくてもやっとする!

 

 

これは今のわたしから見たスタァライトだけれど、みんなから見たスタァライトも機会があったらぜひ教えてほしい。

何度もこの舞台を求めて劇場へ足を運ぶわたしも、きっと再演に魅せられている。